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7月16日「やぶ入り」・校長閑話

 

 「藪入り」とは、江戸時代に都市の商家で、奉公に出された少年(10歳ぐらい)が、年2回実家にもどることができたお休みのことです。この習慣はやがて結婚した女性にも広まっていきました。奉公人は丁稚(でっち)・小僧(こぞう)などと呼ばれ、住み込みで雑用をしていました。朝から一日働き、夜は番頭さんなどから、読み書き、そろばんを教わることもありました。今で言う土曜日、日曜日などという休日はなく、休みなく働いていたのです。また、江戸時代の嫁入りは、家に嫁ぐのであって、家のしきたりに従わなくてはなりません。ですので、勝手な振る舞いは許されなかったのです。年2回、実家に戻れた日は、旧暦1月16日(藪入り)と7月16日(後の藪入り)です。この日にちの設定は、小正月(1月15日)・お盆(7月13日~15日)の翌日になります。現在は、働き方改革や労働スタイルの変化もあり、「藪入り」のような風習はありませんが、今日で言うと「お正月」や「お盆」の帰省になります。家族構成や家庭環境の変化で「帰省」という経験がない人もいると思いますが、私は「お正月やお盆」の帰省は年中行事でした。親戚の家にご挨拶に伺ったり、地元の方々との交流があったり、小学・中学・高校時代の友人との再会を楽しみにしたりと1年の中でも大きなイベントでした。しかし、新型コロナの感染拡大の影響で、昨年から帰省も難しい状況になりました。

 「藪入り」は古典落語にも出てくるお話です。この話には明治時代の「ペスト」の流行のことが出てきます。感染経路であるネズミを駆除することで、懸賞金がもらえたそうです。奉公人の「亀」がこの懸賞金を手にして、里帰りしたことで騒動が起こります。詳しくは落語「藪入り」を聞いてみて下さい。落語には「オチ」があります。奉公先のご主人にたいする「忠信」とネズミの鳴き声の「チュウ」が掛けられています。

 

藪入りの夢や小豆のにえる中  与謝蕪村

 

 10歳ぐらいの少年が、やっと実家にもどり、わずかな時間を家族で過ごす。母親は息子のために料理を用意します。うたた寝も小豆が煮える間ほど、少年はどんな夢を見ているのでしょう。

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