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2020年4月 9日 (木)

ジャスミンの花

家の近くにジャスミンの花が群生しています。夏が近づくと一斉に花開いて、その坂道は馥郁たる甘い、それでいて爽やかな香りに満たされます。いつもはゴールデン・ウイークくらいの頃、遅い年は6月くらいでしょうか。

今日、ふと見上げると、その花が既に開いているのを見つけました。まだ香りをたてるほどではありませんが、もうそんな暖かさなのかとびっくりしました。

実は、恥を忍んで白状しますが、私はその坂道を歩いて香りに包まれるたびに、いい香りだなと思いながら、その花の名前を知りませんでした。そこでふと思い立って、写真を撮り、SNSにアップして「この花の名前を教えて」と聞いたら、ある友人が「ジャスミンじゃね?」とあっさり教えてくれました。

そう言われてみると、中華街などで供されるジャスミンティの香りです。

大好きな詩人、茨木のり子氏の詩にこんな言葉があります。なんでもないひと言なのに、なぜか忘れられません。

    女のひとが花の名前を沢山知っているのなんか

    とてもいいものだよ

    父の古い言葉がゆっくりよぎる

茨木のり子「花の名」より

女の人に限らず、花の名前、植物の名前をたくさん知っているのはとても良いと思います。

森鴎外の娘、作家の森茉莉氏が書いていたのでしょうか。それとも何か別の小説の登場人物のセリフだったのでしょうか、今でははっきり覚えていないのですが。「名前は茉莉…ジャスミンのこと」だと読んだ覚えがあります。娘さんの名前に「ジャスミン」とするなんて、なんて洒落た明治の文豪だろうと思いました。それに「まり」という音も、例えばヨーロッパでも違和感がありません。「父はそんなつもりで私にこの名を付けました」と書いていたのを読んだようにも思います。もしそうだとしたら、森茉莉は「パッパは…」といつものように鴎外のことを書いていたでしょう。

すべての人が母から生まれるように、すべての人には名前があります。どの人も、生まれた時、その名前を一生懸命考えてくれた誰かが居るということは、忘れがちなことですが、忘れてはいけないことだと思います。

自分の名前について、家の人と話をしてみましょう。誰がつけたの?どういう意味なの?

きっと豊かな物語があるはずです。

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